青森地方裁判所 平成8年(わ)104号 判決 1996年9月20日
裁判所書記官
岸賢久
本籍
青森県西津軽郡車力村大字車力字若林三二番地の一
住所
青森市大字原別字下海原八六番地の三一
会社役員
坂本登紀夫
昭和二五年七月二八日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡邉清及び国選弁護人菊池至各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金一三〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、青森市古川一丁目一一番一六号株式会社青森魚菜センターほか1か所に店舗を置き、鮮魚の販売等を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上金額を一部除外し、車力中央農業協同組合に開設した架空名義の定期貯金に預け入れるなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 平成四年分の実際総所得金額が三七七七万八二八五円であったにもかかわらず、平成五年二月二三日、青森市本町一丁目六番五号所在の所轄青森税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総所得金額が六六四万六六五七円で、これに対する所得税額が二六万六四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額一三一六万六五〇〇円と右申告税額との差額一二九〇万一〇〇円を免れ、
第二 平成五年分の実際総所得金額が五二六二万六八一五円であったにもかかわらず、平成六年二月二四日、前記青森税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総所得金額が六〇九万八二〇八円で、これに対する所得税額が一八万九一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額二〇四七万七〇〇〇円と右申告税額との差額二〇二八万七九〇〇円を免れ、
第三 平成六年分の実際総所得金額が三四七三万四七七七円であったにもかかわらず、平成七年二月一七日、前記青森税務署において、同税務署長に対し、平成六年分の総所得金額が六六六万六三二五円で、これに対する所得税額が二四万五四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額九五〇万九〇〇〇円と右申告税額との差額九二六万三六〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
以下の〔 〕内に甲、乙として番号を掲記するものは、証拠等関係カード記載の検察官請求にかかる証拠の番号である。
判示全事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する平成八年五月二〇日付、同月二二日付(五通)及び同年六月二六日付各供述調書〔乙1ないし7〕
一 斎藤英悦の検察官に対する供述調書〔甲12〕
一 大蔵事務官作成の「現金調査書」、「預貯金調査書」、「敷金調査書」、「商品・消耗品調査書」、「車両・器具備品調査書」、「買掛金調査書」、「未払費用調査書」、「借入金調査書」、「事業主貸調査書」、「事業主借調査書」及び「固定資産譲渡益調査書」〔甲1ないし11〕
一 大蔵事務官作成の領置てん末書〔甲13〕
判示第一の事実について
一 押収してある平成4年分の所得税の確定申告書一枚(平成八年押第二〇号の一)〔甲14〕
判示第二の事実について
一 押収してある平成5年分の所得税の確定申告書一枚(同号の二)〔甲15〕
判示第三の事実について
一 押収してある平成6年分の所得税の確定申告書一枚(同号の三)〔甲16〕
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑とを併科し、罰金については免れた所得税額がいずれも五〇〇万円を超えるので、情状によりいずれも同条二項を適用して免れた所得税額に相当する金額以下とし、以上は刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの。以下同じ。)四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一三〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。
〔求刑 懲役一年及び罰金一五〇〇万円〕
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 嶋原文雄)